製造業記事・技術系記事を中心にライターとして活動している森野です。機械設計や生産管理など、製造業で10年以上の実務経験があり、現在は電子機器の設計・製造を行う小さな町工場に在籍しています。
本サイトでは自身の経験を踏まえ、「町工場」をテーマに連載を行なっていきます。町工場が抱える課題や、知られざる町工場の魅力など、様々な視点から町工場をご紹介していきますので、ぜひお付き合いいただけたらと思います。
第1回目の今回は、町工場の概要と現状、さらにこれからの町工場に必要な施策について解説します。
町工場とは
町工場は「まちこうば」と読みます。テレビやネットニュースで町工場が取り上げられているのを目にしたこともあると思いますが、実際のところ町工場とはどんなものなのでしょうか。
ネットで「町工場」を検索すると、こんな内容が出てきます。
町工場(まちこうば):町なかにある小さな工場。
決して間違いではありませんが、このように町工場はとても曖昧に定義されたものであり、従業員数や資本金などで明確に線引きすることができない存在です。
そこで本連載では、一般的なイメージを加味しつつ、
「町なかにある従業員10〜50名程度の小規模製造業」
といった解釈で町工場を定義させていただきます。
もちろん、従業員200名程度のいわゆる中小製造業も、日本の定義上は町工場と呼んでも問題ありません。また、町なかではなく工業地帯にある小さな工場も町工場と呼ばれる場合があり、上記はあくまで一つの見解にすぎません。
最終的には、経営者や従業員の肌感覚に委ねられている部分が大きく、町工場の形は無数に存在します。
町工場の現状
これまで多くの町工場が、主に下請けとしてメーカーに技術を提供してきました。
しかし、近年では海外製の安価な量産品を導入するメーカーが増え、国内生産に対する需要は減少の一途をたどっています。また、AIや3Dプリンタの普及により、メーカーが下請けとして町工場を選ぶ際の基準も、より厳しくなっています。
こうした背景から、待っているだけで豊富な受注量が約束された時代は終わりを迎え、近年では廃業してしまう町工場も増加しています。
これからの町工場に必要なこと
前項でも解説したように、日本の町工場は非常に厳しい状況におかれています。下請けに頼る従来の事業方針だけではこの時代を生き抜くことは困難であり、会社全体の意識改革が不可欠です。
古い経営体質からの脱却
町工場が窮地に追い込まれている理由には、古い経営体質が大きく関係しています。特に社内の年齢層が高く、長年にわたり特定メーカーからの下請けに頼ってきた会社の場合、ルーティン化された仕事や、閉鎖的な事業方針が社内に染みついていることも少なくありません。
そのため、新たな施策に挑戦するにも、
・初めての取り組みに対する社内理解が得られない
・そもそも何から始めたら良いかわからない
といった、施策以前の問題につまづいてしまう町工場も多いはずです。
しかし裏を返せば、ここで一歩踏み出すことにより、町工場として頭一つ抜けた存在となるチャンスでもあります。
経営者が強い気持ちを持って新しい施策に取り組むとともに、社員に対して現状や今後の方針を丁寧に説明し、まずは凝り固まった常識から脱却していく必要があります。
今後求められる具体的な施策
それでは今後の町工場にはどのような施策が求められるのか、具体例を挙げて解説していきます。
ブランド力をつける
これまで下請け・受注生産のみで仕事を受けてきた町工場も、自社発信の製品開発に力を注いでいくことが重要です。
自社ブランド製品を立ち上げることで、元請けメーカーに頼る受注体質から脱却するとともに、売上の促進、新たなターゲット層の獲得など、様々なメリットへとつながっていきます。
先進技術の追求、開示
日本の町工場が持つ技術力は、世界に誇るべきものです。今後も追求していくとともに、海外製の安価な量産品ではまかなうことができない、よりハイスペックな製品を必要とするメーカーに対して、その技術力を開示していくことが有効です。
Webマーケティングを導入した営業活動
町工場とWebマーケティングは非常に良い関係性を持っています。
「待ち」の営業で仕事を受注してきた町工場にとって、直接訪問や展示会といった「攻め」の営業はハードルが高く、敬遠されがちです。
WebサイトやSNSといったWebマーケティングによる営業活動は、導入することで顧客側からのアプローチを増加させる狙いがあります。
ある程度自社について興味を持った「見込み顧客」からの問い合わせや受注を獲得できるため、正しく運用すれば「待ち」の営業を得意とする町工場でも、十分に成果を挙げることが可能です。
町工場とWebマーケティングの関係については後日、別記事でも詳しく取り上げていく予定ですので、そちらもぜひご覧いただけたらと思います。
少量多品種生産への対応
町工場が下請けとして大量生産品を受注することはより難しくなる一方で、海外対応ができない少量多品種生産に関しては、町工場にもまだ十分に勝算があります。
このあたりは、メーカーとしても未だ町工場に頼らざるを得ない領域といえるため、今後はあらゆる小ロット生産にも柔軟に対応できる仕組みづくりが鍵となります。
まとめ
本記事では町工場の概要と現状、さらに今後の町工場に必要な施策について解説しました。
町工場にとっては非常に苦しい状況が続いていますが、意識改革を行うとともに、新しい施策を導入することで、まだまだ多くの可能性を秘めています。
次回は町工場の魅力にも触れつつ、仕事内容や待遇など、より現場目線の話題に踏み込んでいきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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